不屈の闘志 -娘と私の2年間 偏差値35からの中学受験-

鬼が出るか蛇が出るか。唐突に中学受験をすることになった母と娘。偏差値35から偏差値62。紆余曲折2年間の回顧録

スランプの原因。

<ゴミと化したテキスト>

一瞬にしてゴミと化した教材を前に、娘は茫然としていた。
 
私は、もう腹をくくり、捨ててしまおうと決めていた。
 
「やめて!」

「私受験やめないよ。絶対にやめないから」そう娘は叫んだ。

 
そして、叫びながら泣いていた。
聞いていた私も泣いていた。
 
娘の声は聞こえたが、もう私の心までは届かなかった。
 
私は娘の方を振り返りもせず、ゴミ袋の口を縛った。
もう終わりにしよう、という思いの方が強かった。
 
流れを変えたのは夫だ。
夫はその二人のやり取りを見ていたのか、いないのか、よくわからない。
 
ただ、ゴミ袋を見て言った。
 
「あー、本のゴミは今日じゃないんだよ、明後日!だから今日は出しちゃ駄目だよ。」
「それから、本はゴミ袋に捨てないで、ちゃんとビニール紐で縛ってね。紐は倉庫にあるよ」
 
勢いに任せて、そのままゴミ捨て場に行こうとしていた私は、
出鼻をくじかれた。
 
そうか。本を紐で縛ってもいない。いや、縛ったところで、今日は出せないのか。
 
その時だ。
隙をついて、娘が突進してきた。
11歳と言っても力は強い。

私はよろけて、体をぶつけた。
そしてゴミ袋から手を離してしまった。
「痛っ」と、私は叫んだ。
 
手を離れたゴミ袋に娘の手が伸びる。私の手も伸びる。
しかし、力で負けても腕は私の方が長い。
 
私は何とか袋を奪い、そのまま隣の部屋に立てこもった。
 
「返してよ!」とドア越しに娘が怒鳴った。
「返さない!」私も怒鳴り返した。
 
しばらく夫と娘の会話が聞こえたが、
やがて夫は会社へ娘は学校へ行った様だ。
 
家は再び静けさを取り戻した。
 
私は疲れて横になった。目をつぶりながら運命について考える。
もし、受験をやめることが正しい道であったのなら、今日あのままゴミに出せたはずだ。
しかし、捨てられなかった。
もしかすると、これは、『捨ててはいけない』というお告げではなかろうか。
私は道を誤っているのかもしれない。
 
午後になり、娘が帰宅した。
真っ暗な部屋に、ぽつんと座っている私を見て一瞬ぎょっとしていたが、
やがて隣に座って話し始めた。
 
「今朝はごめんなさい」
「私、やっぱり受験がしたいの」と娘が言う。
 
「でも、起きられない程、体が辛いんでしょう。見てる方も辛いよ」と私が言う。
 
「うん。体が辛いっていうか、私、前回の組分けテストが良かったから、油断しちゃってたんだと思う」と娘が答える。
 
「あと、友達がクラスアップしたのに、自分は上がれなかったから、頑張る気持ちが弱くなっちゃって」と娘が言う。
 
「でも、私やっぱり頑張りたい!だから勉強教えてほしいの」
娘は、真っ直ぐに私を見ながら言った。
 
そうか、疲労だけではなかったのか。
 
「ママも、言いすぎちゃってごめんね」私はそう言って、立ち上がって電気をつけた。
 
元通りに並んだテキストを見て、娘の顔は、ぱっと明るくなった。

 

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