<グランピング後>
翌朝、夫と娘は7時前に帰宅した。
すっかり熟睡してしまった私は慌てて起き上がる。
朝ご飯の準備をしていない。
学校の準備もしていない。
「ただいま。朝食も買ってきたから、寝てて。顔、真っ青だよ」と夫が言う。
川で泳いだなら、洗濯もすぐにしなきゃ。
そう思っていた矢先に、どんどんと荷物が片付き、洗濯機も既に回っている。
夫は荷造りも荷解きも得意だ。本当にありがたく思う。
娘は「もうね、最初は楽しかったんだけどね、夜超やばかった。
誰もいなくなっちゃって、熊が出るかと思った。ホラーだったよ。」
と楽しそうに話している。
「ママには、絶対無理だったね。夜中に帰るって言ったと思うよ。あはは」と爆笑していた。
「そうだったの。怖くて眠れなかった?」と聞く。
グランピングから早朝に帰宅し、今から学校で、帰宅後は塾だ。
受験生の親なのに、こんな無茶なスケジュールを組んで大丈夫だったろうか。
「大丈夫。いつも通り、横になって1分でいびきをかいてたよ。」と夫が笑う。
のび太的入眠能力は、野外でも発揮できた様だった。
なんて頼りがいのある能力だろう。
「でも朝早かったから眠い。」と娘は言い、「帰りの車でも寝てたから大丈夫だよ」と夫が答えていた。
体を動かす気になれず、二人の日常会話を、椅子に座ってぼーっと聞いていたが、
「いいから今は寝て。」と夫に促され、とりあえず横にならせてもらうことにした。
病院は8時30分から受付だ。
あと1時間くらい横にならせてもらおう。
夫も娘も自然の中でリフレッシュしたようで、とても、すがすがしい顔をしていた。
突拍子もないアイディアだったが、実行して良かったかもしれない。
いよいよ夏休みが始まる。
小5の夏は算数をもっと頑張りたいと娘は言っていた。
小5に入っても、算数はまだその月の単元を消化することで精一杯だったので、
きちんとした復習はできていない。
小5のうちに、しっかり基礎を固めておきたいところだ。
ようやくテスト直しノートを作り始めたところだった。
今まで雑だったテストの解き直しもそろそろきちんとやりたい。
理社もいい加減にきちんと始めたい。
やりたいことは沢山あった。
それには、早く元気になって再起しなければ。
二人の笑い声を聞きながら、部屋を出た私は、安心して再び眠りについた。