<突然の発熱>
日曜日の夜のことだ。
娘がほとんど口を利かなくなった。
機嫌が悪いのかと思うとそうでもない。
勉強も、ぼーっとして机に座ったまま腕は動かない。
食事の時間になったので、夕食を出すが、
「ごめんね、もう食べられない」と言ってほとんど食べなかった。
娘は食欲旺盛でこの頃から私の倍近く食べるし、
今日はおやつも食べていないので、完全に怪しいと思った。
おでこを触ると熱い。
「ちょっと熱を測ってみようか」と体温計を渡す。
38.5度だ。
そういえば、ママ友さんから、
学校でインフルエンザが出たと言う話を聞いたばかりだ。
インフルエンザかもしれない。
これだけ、おでこをつき合わせて私も勉強してきたのだ。
私も感染している可能性は高い。
しかし、幸いにして、まだ熱はないので、急いで看護の準備をした。
大急ぎで娘の寝室を整え、
体を熱い蒸しタオルで簡単に拭いて新しいパジャマに着替えさせ、
横にならせる。
倉庫からOS-1を取って来て、マグカップに入れて少しだけあたためる。
水分も吐いてしまうか、は重要なポイントだ。
ごくごくと飲み込む音がする。
その後吐く様子もなかった。
水分は取れる様なので、ほっとした。
冷えピタを持ってきて貼ると、か細いながらも、
「つめたい」という言葉が出てきて少し安心する。
赤ちゃんの時によくやった様に、保冷剤をタオルにくるんで脇の下に挟んだり
首元を冷やしたりした。
娘は嫌だとも邪魔だとも言わず、なすがままにされている。
動くことがしんどいのだろうか。
気力がない感じだ。
何よりほとんどしゃべらないことが、かなり不気味だった。
うなずいたり、どうしても答えが必要な質問には答えるが
基本的に会話をする気力がないようだった。
小さい頃は頻繁に熱を出し、会社に電話が来てよく迎えに行った。
38度を超えていても、案外ケロッとしていて、
抱っこ覚悟で向かった私は驚くばかりだった。
「歩けるよ」と言って、すたすた歩くので、保育士さんも驚いていたし私も驚いた。
熱を出したのは久しぶりだ。
すっかり熱に強いタイプだとばかり思っていたので、こんなことは初めてだった。
横にならせた後どうしようと迷う。
まだ19時半だ。眠れるだろうか。
とはいえ、今文字が書いてある本や漫画を置いても
動画やテレビの光を見ても吐き気を催すだけだろう。
「眠ってしまった方が良いよ。朝の8時から病院が開くから一緒に行こう。
寝付くまで側にいるよ」
そう私は言って、読書灯だけ付けて横で本を読んでいた。
やがて、すぅすぅと娘の寝息が聞こえた。