不屈の闘志 -娘と私の2年間 偏差値35からの中学受験-

鬼が出るか蛇が出るか。唐突に中学受験をすることになった母と娘。偏差値35から偏差値62。紆余曲折2年間の回顧録

小6、6月。塾友トラブル_後編。何とか謝りたい。

<塾友トラブル_後編>

参った。翌日塾があれば良いのだが塾はない。

塾友とは揉めごとを避ける為に、電話番号を交換させていなかった。

至急謝りたいが一体どうしたものだろう。

 

「他の友達は何て?」と聞くと

「手紙を書いて謝ったら?」って言ってた。

 

手紙か。今夜書いても明日の朝便になり、到着するのは明後日だ。それでは遅い。

 

うん?手紙、手紙、

その時、ふとひらめいた。

 

「ねえ、正月特訓で住所交換したよね。年賀状かその住所のメモすぐ出せる?」と聞くと娘がハッとする。

 

「あるよ!取ってくる!!」そう言って娘は階段を駆け上がった。

 

その間私は夫に交渉した。

「ごめんね、疲れているところ申し訳ないのだけど、車で送ってくれない?

方向音痴な私が知らない土地でグーグルマップを見ながら探してたら、夜中になっちゃうから」と頼む。

 

「やだ!俺早くシャワー浴びたいし、お腹空いたし。車は今朝鳥がフンを落としたし、あいつが蒔いた種なんだし」と夫は冷たい。

 

「お願い!一生のお願い!!車から出て来なくて良いから。

カーナビの通りに向かって、近くに降ろしてくれれば良いから。」と拝みながら粘る。

 

「もうしようがないなー。俺このままの格好で行くけど良いね?」と夫は渋々言う。

 

見るとYシャツを脱いで、ラクダ色のユニクロの薄い肌着姿だった。

本当はその辺のシャツでも羽織って欲しいが、ここで機嫌を損ねてはいけない。

 

素早く頷き夫にお礼を言って、自分だけ着替え年賀状の住所を頼りに、友達の家へ向かった。

 

近くで車から降ろしてもらい、友達の家を探す。

やがて娘が「あ!Sちゃん家の車だ!」と言った。

 

恐る恐るインターフォンを押す。

「夜分遅くにすみません。満月です。Sちゃんに謝りに来ました」と私が言うと

しばらくして、お父様とお友達が出てきた。

 

二人を見て、私は体を90度に曲げて頭を下げた。

 

「今日は娘の不注意で、お嬢さんの志望校が他の人に知れてしまったそうで、本当に、申し訳ありません。

今後は専用の箱を作って、二度と同じことが起こらないようにします。本当に申し訳ありません」と言う。

 

娘も私の横で頭を下げている。

 

そして、Sちゃんに向かって泣きながら

「本当に、本当にごめんなさい」と私は謝った。

Sちゃんの気持ちを思うと苦しかった。

 

とめどなく涙が溢れ「ごめんね、Sちゃん、ごめんね。」と繰り返してしまう。

 

Sちゃんも泣いていた。

娘も「ごめんね」と言いながら泣いていた。

 

3人とも泣いて、涙が止まらなかった。

Sちゃんの気持ちがよくわかった。

 

 

やがて様子を見ていたSちゃんのお父様が

笑顔で優しくおっしゃった。

 

「話は聞いています。そして、『もう過ぎたことだ』と娘に話しました。

 

それより満月ちゃん!今日算数1位だったんだって?おめでとう!!よく頑張ったね」

 

何て器が大きいお父さんなんだろう。

謝った後、「大丈夫ですよ」とか「わかりました」という返事をいただいたことはあったが、

 

「過ぎたこと」という言葉をいただいたのは初めてだった。

 

「過ぎたこと」。

それは「もう先に進んでいます」ということだ。

お父様は色々察してくださっているのかもしれない。

 

優しい言葉が心に染みて、一層涙が溢れ、とうとう鼻水まで出てきてしまった。

慌てて手ぶらで来たことに気が付く。

 

ハンカチもティッシュもない私を見かねて

お父さんがティッシュの箱まで取ってきて出してくださった。

 

全く私は何をしているのだろう。情けないったらない。

 

それでもお父様は、大変紳士に対応してくださり、娘も無事に仲直りができた。

そして、取り返せたSちゃんの志望校メモも返すことができた。

 

「夜遅いから車まで送りますよ」とお父様が何度も言ってくださったが、

丁寧にお断りして車に戻った。

 

娘と二人、無言のまま車に近づくと

拍子抜けするほど脱力した姿で、

ラクダ色の肌着姿の夫が、のんびりポテトチップを食べているのが見えた。

 

緊張感があった中、夫だけがまるで別世界のようだ。

 

その姿を見た途端、

急に安心して、張りつめた緊張の糸が切れた。

娘も同じ様だ。

 

「うわ!パパ!あんな格好で来ちゃったんだ」

「あ!車の窓に鳥のフンまでついてるし」

と娘がボソッと言う。

 

 「そう言えばそう言ってたね。

Sちゃんパパに送ってもらわなくて正解だったかもね。」と私も言って、二人で笑った。

 

※この後受験まで、Sちゃんは娘をライバルと言ってくれ、夏の天王山も受験も一緒に歩みました。

Sちゃんのお父様とも、これを機に距離が縮まり、お互いに影で支える存在として気にかけていただいたり、時には娘を送っていただいたり、親子でお世話になりました。

 

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